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福井内科消化器科クリニック訪問記
インタビュー 2024.03.01

【特別企画】代表理事 宮島永太良の福井内科消化器科クリニック訪問記

2024年2月29日(木)午後、宮島永太良は画友/住谷重光・美知江夫妻と共に二人の作品が長年展示されている小田原市の福井内科消化器科クリニックを訪ねた。今回は、宮島がその様子をレポートした。                   

◇宮島永太良が観た「アートギャラリークリニック」
神奈川県小田原市鴨宮の地には、画家の住谷重光さん・美知江さん夫妻の絵が常設されている福井内科消化器科クリニックがある。住谷さん夫妻の絵は2~3年という長いスパンで架け替えがされ、つい最近、その記念すべき架け替えが行われたばかりだというので、そのお披露目にうかがってみた。

福井内科消化器科クリニック訪問記

JR鴨宮駅からバスで10分ほどのショッピングモール「ダイナシティ」の近くだが、その付近にクリニックらしき建物は見つからない。この日同行いただいた住谷さん夫妻に案内されたのは、クリニックとは思えない、ガラス板が連結した建物だった。自動ドアをくぐると、やっとクリニックらしい設えが見えて来る。
福井光治郎元理事長は早速、受付から私たちを迎えてくれた。
「このクリニックは入るところがわからないのが特徴なんです」とユニークに話す先生。
そして後ろを振り返れば、やはりクリニックとは思えないおしゃれな待合室空間とともに、重光さんの4点の絵が目に飛び込んでくる。海景画である。住んでいる大磯から、小田原方面の相模湾を描いたという重光さん。この部屋以外にも院内の要所、そして院長室にも住谷さん夫妻による絵が掛けられている。まさに「アートギャラリークリニック」といっても良い空間だ。

福井内科消化器科クリニック訪問記

福井先生はもともとビルの中のクリニックで医療を行っていたという。美知江さんはその頃から懇意で、やがて夫妻でも交流するようになって35年というから、その絆は深い。
そして現在開業しているこの地にクリニックの建設が決まった時、福井先生は考えた。以前勤めていた病院では、診察室にカーテン一枚しかなく、中の患者さんが医師に話している内容が外に丸聞こえだったのを見て、「患者さんのプライバシーを守るべきだ」と、このクリニックでは診察室の入口と出口を分ける等の工夫を凝らしたという。

福井内科消化器科クリニック訪問記

そしてまた、「病院の内部は殺風景」という観念を打破すべく「病院こそアート」という考えにいたった。この時は審美眼に優れている奥さんの存在も大きかったそうである。何しろ、設計段階からピクチャーレールの導入を考えたというから、その熱意は本物だ。こうして「クリニックにアートが必要」と考えた福井先生のもとに、「クリニックに絵を置いてみたい」と考える住谷さんの思いが運命のように伝わった。経済的な言葉に喩えれば、需要と供給が見事に一致したことになる。

福井内科消化器科クリニック訪問記

では、患者さんの反応はどうなのだろうか。患者さんの中には「この絵はどこで買ったんですか」など質問する人も多くなってきたと言う。アートに興味がある患者さんが多いと思うだろうが、むしろ患者さん、お客さんの方この空間に慣れるうち、アートな目を持ってしまったのではないかとも思える。
今、アートを取り入れようとしている病院は、全国的にも増えてきている。
ここ福井内科消化器科クリニックはまさにそのはしりであり、地域の人たちも仲間にしながら、住谷さんのアートが「健康」に寄与している。
そんな、これからのあるべき医療環境の形が見て取れた。

(文:宮島永太良 撮影:関幸貴)

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